「 乳がん 」 の記事一覧


乳がんの新しい分子標的薬

2014年9月1日(月) Written by 高橋 義人

乳がんの15%から20%は、がん細胞の表面にHER2といわれる特殊なタンパク質が現れ、がん細胞を増殖させる「HER2陽性」乳がんです。このタイプのがんは、再発・転移の多い治療の難しいがんでした。ところが1998年(日本での発売は2001年)、このHER2と結びつきがんを増殖させる信号の伝達を防ぐ「ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)」が開発され、治療成績は格段に向上しました。

また2013年9月、再発患者さんを対象とした新しい分子標的薬「パージェタ(同:ペルツズマブ)」が発売されました。HER2はHER3と結合し、「ハーセプチン」だけでは抑えきれないがん増殖信号を出しますが、「パージェタ」はこの信号を抑える機能を持っています。「ハーセプチン」と「パージェタ」を併用することで、さらに高い治療効果が期待されています。

さらに2014年4月、「ハーセプチン」の効果がなくなった再発患者さんを対象に、分子標的薬と抗がん剤を組み合わせた新しいタイプの薬「カドサイラ(同:トラスツズマブエムタンシン)」が発売されました。この薬は「ハーセプチン」に抗がん剤のDM1を組み合わたもので、HER2を目標にがん細胞に到達すると、結合が外れ、抗がん剤が効果を発揮し始めます。従来の抗がん剤のように正常細胞をダメージを与えることが少なく、副作用が少ないことが特徴です。

ただし「ハーセプチン」は体重50kgの女性の場合、1回当たりの費用が約11.5万円、「パージェタ」は約23.8万円なのに対し、「カドサイラ」は約47万円(患者さんの負担はこの1~3割です。)掛かってしまいます。3週間に1回、効果がある限り投与することが必要なため、患者さんや医療財政への負担が課題となっています。

 

トリプルネガティブ乳がんの抗がん剤治療

2013年3月4日(月) Written by 石橋 大

「トリプルネガティブ乳がん」とは、多くの乳がんの発症と増殖に関わるとされる3つの受容体と関係しない乳がんの事です。3つの受容体とは、エストロゲンとプロゲストロンと言う2種類の女性ホルモン受容体とHER2(ハーツー)というたんぱく質の受容体です。そしてトリプルネガティブ乳がんの患者さんは乳がん全体の10~15%と言われています。

HER2陽性の乳がんにはハーセプチンに代表される抗HER2療法が高い効果を示します。また、ホルモン受容体をもつ患者さんにはホルモン療法がやはり高い効果を示します。しかしながらトリプルネガティブ乳がんの場合にはこの二つの療法が使えないので、それ以外の抗がん剤治療が行われます。具体的にはアンスラサイクリン系抗がん剤やタキサン系抗がん剤が使われます。さらに2011年に日本発の新薬ハラヴェンが承認されています。さらに先ほどの治療後にTS-1やゼローダを追加する臨床試験も進められています。この他にも多くの治療が考えられています。

トリプルネガティブ乳がんはネガティブなイメージが付きまといやすいですが、再発無く長期に生活している方々も多くいらっしゃいますし、新薬や治療法の開発も盛んです。希望を持って治療に取り組みましょう。

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